■能力が不足すると認められる試用期間社員の解雇
試用期間社員の場合でも解雇にあたっては法定の手続きが必要
 従業員の採用に当たって「試用期間3か月」などとして取り扱っているケースをよく見ます。いわゆる『試用期間社員』とされる見習い期間にある新人の取り扱いですね。この試用期間の間に、その新人の能力・適正を見極めて、本採用に移行するか否か、または本配属先を決定したりするわけですが、どうもこの期間内であれば 『即時解雇できる』 というような誤解が世間一般に散見されます。

 試用期間社員であろうとも労働基準法の定めによって保護されますから、解雇に当たっては(※)法定の手順を経る事が求められます。これは『本採用拒否』の場合でもつまりは解雇ですので同様の扱いとなります。

 ただし入社後14日以下の者については、法定の解雇予告の手続きが免除になります。これが労働基準法に定めのある『試みの試用期間』であり、この期間内なら即時解雇ができることになります。 この法定の『試みの試用期間』の取り扱いと、会社ごとに就業規則で規定している『試用期間』が混同されていることが誤解を招く要因となっているようです。

 上記のように14日以下で解雇する場合以外のケースでは本採用拒否になる可能性を見通して、事前に準備をしておく必要ポイントがあります。まず、試用期間採用の際に、本採用に移行するために必要となる能力、または期間内に積むべき実績などを示し具体的な目標を掲げてやる事、また能力不足と判断された場合は本採用が認められない場合もある事を十分に説明しておくこと。これらは書面によることが適当でしょう。

 試用期間社員について付け加えますと、上記の取り扱いは 就業規則にきちんと謳い込んでおくことが大前提 となります。また、社会保険関係については、試用期間の初日から加入させることになりますし、年次有給休暇の付与日数算定の基礎となる勤務期間についても、同様にこの初日から算入することとなります。

(※)『法定の手順』とは、
解雇を行うにあたって、労働基準法では次のような手順を経る事が求められています。
1. 解雇の予告は少なくとも30日以上前に行う。
2. 30日前に予告しない場合は、30日分以上の『解雇予告手当』を支払う

 例外として、天災事変その他やむを得ない事由のために事業継続が不可能になった場合、または懲戒解雇に相当するような『労働者の責めに帰すべき事由』を労働者が生じさせた場合は、所轄労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けることで、上記の『法定の手順』を経ることなく即時解雇することができます。ただ、この認定のハードルはそれなりに高い事を申し添えておきます。