<就業規則と労務管理> フレックスタイム制


フレックスタイム制とは、1か月以内の一定期間における総労働時間をあらかじめ定めておき、その枠内で従業員が始業及び終業の時刻を自主的に決定して働く制度で、変形労働時間制の1つです。
従業員が生活と業務の調和を図りながら効率的に働き、労働時間を短縮しようとするものです。
必ず出勤していなければならない時間帯(コアタイム)と、その時間帯の中であればいつ出社または退社してもよい時間帯(フレキシブルタイム)を設けている場合が多いですが、全部をフレキシブルタイムとすることもできます。

フレックスタイム制を導入するには、就業規則に始業及び終業の時刻を従業員の決定に委ねる旨を定めます。
そして、労使協定を締結することが必要になります。(届出は不要)
労使協定で定める事項は以下の5つです。

フレックスタイム制を適用する従業員の範囲
フレックスタイム制の対象とする期間(清算期間と言います。通常は1ヶ月)
清算期間における総労働時間
標準となる1日の労働時間(有給休暇を取得するときに用います)
コアタイム・フレキシブルタイムを定める場合は、その時間帯の開始及び終了時刻
清算期間における総労働時間は、清算期間を平均して1週間の労働時間が法定労働時間(原則40時間)の範囲内になるように定めなければなりません。
フレックスタイム制では、「時間外労働」となるのは、実際の労働時間が清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間です。
時間外労働を1日単位で見るのではなく、清算期間単位で見るのです。

実際の労働時間が、労使協定で定めた総労働時間よりも不足している時にはその分の賃金をカットしたり、不足している時間分を翌期間の総労働時間に上乗せすることができます。
しかし、多く働いていた場合には、その分を翌期間の総労働時間に充当することはできず、超過時間分の割増賃金を支払わなくてはなりません。

フレックスタイム制は、始業及び終業時刻を従業員が決める制度ですが、タイムカード等により労働時間の管理はしなくてはなりません。これをしないと正しい賃金計算ができなくなります。
比較的導入しやすく、職種によっては従業員の作業能率・満足度とも上がる可能性のある制度ですが、集合ミーティングが実施しにくい、または社員間、部署間の意思の疎通が難しくなり、個人主義化、セクショナリズムの表面化などの弊害が生ずるケースもあります。導入にあたっては制度のメリット、デメリットの正しい理解と、労働時間管理がポイントになります。