<就業規則と労務管理> 偽装請負


偽装請負とは、契約上は業務請負の形をとりながら、実態としては労働者派遣であるもののことを言います。
そもそも請負契約とは、「請負人がある仕事を完成させ、注文者がその仕事の結果に対して報酬を与える事を約束する」契約であり、注文者と請負人の間に指揮命令関係は生じません。これに対し「偽装請負」は、他社から派遣された労働者を指揮命令して使っている実態があるのに、派遣元と「請負契約」を結んだかのように偽装し、労働者に対する安全責任や雇用の責任を曖昧にしているのです。
労働災害が起こった場合、発注者と請負会社のどちらが責任を負うのかで問題になります。また、契約を打ち切るかたちで事実上の解雇も簡単にできてしまうという、労働者保護に欠ける様々な問題が生じます。

実態が労働者派遣に該当する場合、労働者派遣事業についての許可・届出がなければ重大な法令違反となります(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)。許可・届出があったとしても、派遣元事業主の講ずべき措置等を行っていなければやはり労働者派遣法違反です。

職業安定法第44条は、使用者責任を負うことなくピンハネする「人貸し業者」を禁止しています。適法な労働者派遣に該当しないものは、職業安定法違反ともなり、注文側・請負側ともに処罰されることになります。

ここ数年、製造業やIT業界に対する労働局の監督が強化されているようです。
業務委託を請け負った会社が注文者のもとへ労働者を送り、注文者が直接その労働者へ指揮命令をしてしまうと「偽装請負」であると判断され、偽装する意図はなくとも法律違反に加担してしまうこともあります。

労働省告示によると、「請負」と判断する要件は以下のようになります。

1、(1)〜(3)までのすべてを請負事業主が直接自ら行っていること
(1) 業務遂行方法の指示、業務遂行の評価
(2) 始業・終業時刻、休憩・休日・休暇等の指示、時間外・休日労働の指示と管理
(3) 服務規律に関する指示、労働者の配置・変更
2、(1)〜(3)までのすべてを、注文者から独立して処理していること
(1) 資金の調達、支弁
(2) 民法、商法その他法律上の事業主の責任遂行
(3) イ又はロに該当し、単に肉体労働の提供でないこと
イ 自ら準備・調達する機械・設備・機材・材料・資材により業務を行うこと
ロ 自ら行う企画又は自己の有する専門的技術・経験に基づいて業務を行うこと

こうした点に注意して自社の業務運営の状況を点検し、必要であれば労働者派遣の許可取得について検討するようにしてください。