<就業規則と労務管理> 裁判員制度への対応


従業員が裁判員に選ばれたときの企業としての対応について確認します。

労働基準法第7条では、「使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。」という「公民権行使の保障」を定めています。
労働者が、裁判員または裁判員候補者等として選出され、そのために休暇取得の申請をすることはこの公民権の行使にあたります。従って、会社はその公民権行使にかかる裁判員制度参加のための休暇申請を拒否することはできません。また、裁判員としての職務を遂行するために仕事を休んだことを理由として、解雇などの不利益な取扱いをすることは禁止されています。(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第100条)

しかし、その休暇を有給にするのか、無給にするのかなど、賃金の取扱いについての決まりはないため、労働者が裁判員制度に参加する時間を有給とするか、無給とするかは企業の裁量によることとなり、具体的には就業規則で定めることになります。

経団連が昨年9月に実施したアンケートによると、裁判員のための特別休暇時の賃金は、86%が有給、2%が無給、未定が12%となっています。裁判員になった場合、1日あたり1万円以内の日当と交通費が支払われます。この日当は、裁判員の職務に対する報酬ではなく、職務を行うに当たって生じる損害(裁判所に来るための諸雑費、一時保育料などの出費、収入の減少など)の一部を保障するものと説明されています。従業員が有給休暇をとって裁判に参加した場合でも、日当を受け取ることは問題ありません。

就業規則等に関してですが、すでに選挙権や公民権の行使をするための規定がある場合には、その既定に準じて運用するということでも良いでしょう。
ただし、裁判員制度に参加している間、「何日までを有給にするか」「有給の場合に通常の賃金の何割を支給するのか」など、既存の規定とは異なった取扱いをする場合には就業規則の見直しが必要です。
また、裁判員候補者として裁判所に出頭したり、裁判員としての職務に従事したりする場合には証明書が発行される予定ですので、就業規則ではその証明書を提出する義務を定めることをおすすめします。

そのほか、殺人事件などの悲惨な事件の審理を担当し、精神的ショックを受けている従業員へのメンタルケアなども必要になってくるでしょう。