■退職後の守秘義務違反
社員教育・制度策定など予防に注力すべき
 近時、会社から顧客データが持ち出されるような事件が後を絶ちません。こういった機密データの持ち出しの場合、従業員が犯行にかかわっているケースがほとんどです。重要な情報の漏洩はライバル会社を利して会社に金銭的損害を与えるばかりでなく、社会的な信頼を大きく失墜させ、その後も長年に渡る甚大な被害生じさせます。

 こんな状況を避けるために、まずは社員と個々に退職後も含めた『秘密保持契約』を締結します。これを行うことで事後に漏洩行為に対し、漏洩を客観的に立証した上で、債務不履行による損害賠償請求ができるようになります。

 ただ、この漏洩したデータが『不正競争防止法』に規定する要件に該当するものでなければなりません。

この要件は以下の通りです。
1. 公然と知られていないものであること
2. 秘密として会社の相当の管理下にあること
3. 事業活動に有用な技術または営業上の秘密であること

上記の要件に該当し、漏洩事実を客観的に立証できれば損害賠償請求ができることになりますが、失墜した社会的信用を取り戻すのは並大抵のことではありません。これを考えると事後の対策も大切ですが、 就業規則の整備も含めた社員教育の徹底・システム管理の強化を柱とする予防対策 こそが会社にとっての最重要課題でありましょう。