■健康診断を受けない社員
受診は労働者の法的義務です
 会社に実施が義務付けられている最低年1回健康診断については、労働安全衛生法に規定されておりますが、従業員の健康診断受診義務についても同法に定められています。しかし、会社側に罰則規定がある(50万円以下の罰金)のに比べ、従業員側には罰則がないこともあり、『受診を義務』として受け止める意識はあまり高いとは言えないのが現状のようです。

 しかし、そんな状況に流されて受診拒否を黙認していた場合、会社には大きなリスクが生じます。そもそも会社には従業員の生命および身体の安全に配慮する義務があるため、例えば倒れた従業員の病気の原因が業務にあると指摘された場合に、健康診断を受診させていなければ安全配慮義務違反があったとみなされてしまいます。判断の要素はこの点だけではありませんが、最終的に会社の管理に問題が多いとの判断が下されれば、家族や遺族から損害賠償請求訴訟を起こされて敗訴し、多額の賠償金の支払い義務が生ずる事態も考えられます。

 こんな経営リスクを軽減するためにも、あるべき雇用管理の姿を形作るためにも 就業規則に健康診断の受診義務を謳い込み、これを 拒否する従業員には業務命令として指示を出し、これに従わなければ就業規則に定める懲戒規定に則って処分することになります。

 また、健康診断実施の留意点として、労働時間外に実施された場合には、その時間分の賃金を支払う必要があること、各従業員の健康に関する情報を外部へ漏らさないこと、従業員が会社の指定する医師以外の別の医師の手による受診を希望する場合には、その医師の診断証明書の提出(実施3か月以内のもの)で代替することを認め、さらにその費用を会社で負担すること、などがあります。