<就業規則と労務管理> 従業員の副業


民間企業の従業員が副業をすることに関して、労働法には特に規定はありません。しかし、多くの企業では就業規則の中に副業を禁止する規定を設けています。
2005年の厚生労働省の調べによると、50.4%の企業が従業員の副業を「禁止」し、28.5%が「許可が必要」、4.5%が「届出が必要」としています。

就業時間外は個人の時間であるから自由なはずです。
なぜ多くの企業が副業禁止の規定を設けているかといえば、

就業時間以外は心身の疲労回復に充てるべきで、副業はそれを妨げる
心身の疲労や雑念で、本来の業務への専念を妨げる
残業や休日出勤を命じられなくなると困る
顧客情報や技術情報の漏えいが心配
といったことが考えられます。

しかし、終身雇用は崩壊し、賃金やボーナスがなかなか上がらず、さらには成果主義など多様な制度が広まって生活費にあわせた賃金が保証されなくなっている今、「副業」に興味を持つ人は少なくないでしょう。新たなタイプの副業として、休みの日を使って事業を起こす「週末起業」という言葉も注目を集めました。
また、インターネットを駆使して収入を得ることも簡単になっている時代です。
こういった時代背景の変化とともに、社会全体としては副業を容認する方向へ動いてきています。

考え方によっては、「副業」ができる人は能力が高く、自己啓発やボランティアなどの活動と同じように、本業にもいい影響を与えるものかもしれません。

近年の裁判例でも、具体的に業務に支障があったり、情報の漏えいなどがあったりしなければ、就業規則の副業禁止規定に違反したことをもっての懲戒処分は、無効となることが増えています。

今後、企業の対応としては、本業に支障が出ないようにすること、情報の漏えいがないようにすること、会社の信用・評判を下げないようにすることなどを中心に考え、就業規則で副業を許可制としたり、副業として禁止する業務を定めたりすることが必要になってくるでしょう。
競業他社で働くことや、本業の会社の名刺や肩書きを使うことなども禁止すべき事項となります。